生命保険 必要保障額の計算
遺族の生活費・住宅ローン・教育費から必要額を積み上げ、遺族年金と貯蓄と既加入分を引いて、不足額だけを出します。
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仕組みと使い方
必要保障額は何でできているか
生命保険が答えるのは狭い問いです。収入が明日から永久に止まったとき、遺された家族には何がいくら必要で、そのうちいくらはすでに用意できているか。その差だけが保険で埋めるべき額で、それ以外は払いすぎか、計算の代わりに置かれた経験則です。
必要額の側は2つの部分でできています。
必要額 = 現在価値(年収 × 必要割合 × 年数)+ 住宅ローン + 負債 + 教育費 + 葬儀費用
前半は失われる収入の補填で、保険金は運用しながら取り崩すため現在価値に割り引きます。後半は、稼ぎ手がいるかどうかに関係なく発生する支出です。これに対して、預貯金・遺族年金・既加入の保障がすでに用意できている額として立ちます。初期値の世帯では、必要額8,829万円に対して用意できている額が3,904万円、差し引き4,925万円が不足額です。
補填年数がすべてを動かす
ほかの条件を固定し、収入を補う年数だけを変えた場合です。
| 補填年数 | 生活費の補填 | 必要額の合計 | 不足額 | 年収倍率 |
|---|---|---|---|---|
| 5年 | ¥2040万 | ¥3290万 | ¥1140万 | 1.9× |
| 10年 | ¥3980万 | ¥5230万 | ¥2470万 | 4.1× |
| 15年 | ¥5820万 | ¥7070万 | ¥3730万 | 6.2× |
| 20年 | ¥7580万 | ¥8830万 | ¥4930万 | 8.2× |
| 25年 | ¥9250万 | ¥1.05億 | ¥6070万 | 10.1× |
| 30年 | ¥1.08億 | ¥1.21億 | ¥7150万 | 11.9× |
5年なら1,142万円、30年なら7,152万円。年収倍率にすると1.9倍と11.9倍で、同じ年収・同じ負債・同じ貯蓄からこれだけの幅が出ます。ここは最も正確に決める価値のある入力ですが、決めるのは金融の事情ではなく末子の年齢です。増え方が直線でない点にも注意してください。遠い年ほど強く割り引かれるため、1年延ばすごとの増加額は少しずつ小さくなります。
年収倍率が壊れるところ
同じ世帯・同じ負債で、年収だけを動かした場合です。
| 年収 | 必要額の合計 | 不足額 | 年収倍率 |
|---|---|---|---|
| ¥400万 | ¥6300万 | ¥2400万 | 6× |
| ¥600万 | ¥8830万 | ¥4930万 | 8.2× |
| ¥800万 | ¥1.14億 | ¥7450万 | 9.3× |
| ¥1000万 | ¥1.39億 | ¥9980万 | 10× |
| ¥1500万 | ¥2.02億 | ¥1.63億 | 10.9× |
必要な倍率は年収400万円で6.0倍、1,500万円で10.9倍まで上がります。理由は構造的なものです。負債・葬儀費用・遺族年金は年収と無関係な固定額なので、年収が上がるほど相対的に小さくなり、一方で生活費の補填だけが年収に比例して増えます。1つの倍率でこの2つの振る舞いを同時に表すことはできません。年収が同じ2世帯で必要額が数千万円違うのはこのためです。
すでに受け取れるものを数える
遺族年金は最も見落とされやすく、見落とすと最も高くつく入力です。月額だけを動かした場合です。
| 遺族年金 | 現在価値 | 不足額 |
|---|---|---|
| ¥0/月 | ¥0 | ¥7330万 |
| ¥60,000/月 | ¥1300万 | ¥6030万 |
| ¥111,000/月 | ¥2400万 | ¥4930万 |
| ¥150,000/月 | ¥3250万 | ¥4080万 |
| ¥200,000/月 | ¥4330万 | ¥3000万 |
月111,000円の遺族年金は、20年ぶんの現在価値で2,404万円になります。これを計算に入れないと不足額は7,329万円に膨らみます。数えなかったぶん家族が安全になるわけではなく、すでに受け取る権利のある2,404万円を保険料を払って買い直すだけです。遺族厚生年金は加入期間と報酬で変わるので、ねんきん定期便で自分の数字を確認してから見積りを取ってください。
楽観をどれだけ織り込んでいるか
実質利回りは、将来の年をどれだけ強く割り引くかを決めます。仮定である以上、その仮定がいくらの差になるかを見ておく価値があります。
| 実質利回り | 生活費の補填 | 必要額の合計 | 不足額 |
|---|---|---|---|
| 0.0% | ¥8400万 | ¥9650万 | ¥5490万 |
| 1.0% | ¥7580万 | ¥8830万 | ¥4930万 |
| 2.0% | ¥6870万 | ¥8120万 | ¥4440万 |
| 3.0% | ¥6250万 | ¥7500万 | ¥4020万 |
| 4.0% | ¥5710万 | ¥6960万 | ¥3650万 |
| 5.0% | ¥5230万 | ¥6480万 | ¥3320万 |
実質5%で運用できる前提に立つと、0%の場合より買う保障が2,162万円少なくて済みます。これは、家族を失った直後の人がその年の相場の中で運用する前提に、黙って置く賭けとしては大きすぎます。インフレ調整後で1〜2%程度の保守的な率にしておけば、保険料は少し増えますが、相場が期待どおりに動くことに依存しなくなります。
必要額は、生きているだけで毎年減る
ここまではすべて「今日の断面」です。しかし同じ世帯でも、必要な保障額は毎年減っていきます。補填すべき年数が短くなり、残りの教育費も減るためです。下の表は同じ初期値を5年ごとに計算し直したもので、教育費は補填年数に比例して減るものとしています。住宅ローンは減らしていないので、下げ止まる水準が見えていればそれが負債です。
| 経過年数 | 残りの補填年数 | 残りの教育費 | 不足額 | 今日との比 |
|---|---|---|---|---|
| 0年 | 20年 | ¥1000万 | ¥4930万 | 100.0% |
| 5年 | 15年 | ¥750万 | ¥3480万 | 70.6% |
| 10年 | 10年 | ¥500万 | ¥1970万 | 39.9% |
| 15年 | 5年 | ¥250万 | ¥392万 | 8.0% |
| 20年 | 0年 | ¥0 | ¥0 | 0.0% |
10年後には今日の40%、15年後には8%です。この逓減が、生命保険という商品について最も役に立つ事実だと思います。どういう保険が合うかがここから決まるからです——終身ではなく定期、それも「金額が大きい期間」に合わせた長さの定期です。
裏返せば、金額を固定した保険は契約期間の大半で過剰になっています。使い方は2つあります。急な下り坂の部分をカバーする長さの定期に入り、更新も転換もせずに終わらせる。あるいは保障を階段状に組む——一部を短い定期、一部を長い定期にして、合計が必要額の減り方に近い形で下がるようにする。収入保障保険が同じ考え方の商品です。どちらにせよ、世帯の状況が変わったら計算し直してください。5年前に正しかった金額は、いま確実に多すぎます。
この計算機があえて含めていないもの
- 保険料。年齢・健康状態・喫煙の有無・保険会社で変わります。ここで出るのは「いくらの保障を探すか」であって、いくら払うかではありません。
- 税金。死亡保険金は契約形態で相続税・所得税・贈与税に分かれ、相続税なら「500万円 × 法定相続人の数」の非課税枠があります。組み合わせが多すぎるため税引き前で計算しています。
- 配偶者の収入。働いている、または働く予定があるなら、欄を増やさず「遺族に必要な割合」を下げてください。
- 専業主婦・主夫の保障。家事と育児には現実の代替コストがあります。その金額を年収の欄に入れて、もう一度計算してください。
結果の読み方
このツールが測る必要額は、毎年小さくなっていきます。住宅ローンは減り、子どもは大きくなり、貯蓄は増えるからです。今日出た大きな数字は「当面は」であって「ずっと」ではありません。だからこそ、最初の見積りを完璧にすることより、引っ越し・出産・昇給・転職のたびに計算し直すことのほうが効きます。これは計画のための道具であって助言ではありません。あなたの健康状態も税務上の立場も、加入できる商品も知らないので、自分の数字を持って相談に臨むために使ってください。
よくある質問
- 定期保険と終身保険はどちらがよいですか?
- この計算機が測っている必要保障額に対しては、計算上は定期です。必要額そのものが期限付きだからです。上の初期値の世帯では、不足額は10年後に今日の40%、15年後には8%まで下がります。補填すべき年数と残りの教育費が減るためで、一生涯を前提に値付けされた保険は、金額が小さい期間まで払い続けることになります。終身保険が答えるのは別の問い(相続時の納税資金や、自立しない扶養者がいる場合)なので、この必要額の代わりとしてではなく、別の見積りとして比べてください。
- 生命保険はいくら必要ですか?
- 上の初期値の世帯——年収600万円、住宅ローンは団信で完済、教育費1,000万円、預貯金500万円、既加入1,000万円、遺族年金は月111,000円——では、不足額は約4,925万円、年収の8.2倍になります。ただしこの倍率は結果であって基準ではありません。同じ世帯で補填年数を20年から10年に縮めると4.1倍まで下がります。必要な倍率は年収よりも、末子の年齢と負債の残り方で決まります。
- 「年収の◯倍」で決めてはいけませんか?
- 出発点としては使えますが、結論には向きません。同じ世帯で年収だけを変えると、必要な倍率は400万円で6.0倍、1,500万円で10.9倍まで動きます。葬儀費用も負債も年収では変わらず、遺族年金も年収に比例して増えるわけではないためです。倍率が最も外れるのは、負債が大きく貯蓄が少ない若い世帯——つまり保険が最も必要な層です。
- 住宅ローンは必要保障額に入れるべきですか?
- 団体信用生命保険(団信)に加入していれば、契約者が死亡した時点で残債は保険金で完済されるため、必要保障額に入れる必要はありません。上の初期値も住宅ローン残高を0にしてあります。逆に、団信なしのローン(フラット35は任意加入)や、配偶者が連帯債務者になっている場合は残債をそのまま入れてください。ここを二重に数えると、必要額が数千万円単位で過大に出ます。
- 遺族年金はいくらもらえますか?
- 遺族基礎年金は、令和8年度で年847,300円に子の加算(1人目・2人目は各243,800円、3人目以降は各81,300円)が付きます。子2人なら年1,334,900円、月およそ111,000円です。会社員・公務員だった場合はこれに遺族厚生年金が上乗せされ、金額は加入期間と報酬で変わるため、ねんきん定期便やねんきんネットで確認してください。この計算機では月額として入力し、補填年数ぶんの現在価値に直して必要額から差し引きます。
- 会社の団体保険は数えていいですか?
- 数えて構いませんが、性質を理解しておく必要があります。団体保険は退職すると原則として消え、持ち運びもできず、保障額も年収の1〜2倍程度にとどまることが多いためです。まず既加入欄に入れて現在の不足額を見て、次にその欄を0にしてもう一度見てください。その差額が、転職・退職・早期リタイアで一度に失う保障です。
- 受け取った保険金に税金はかかりますか?
- 契約者・被保険者・受取人の組み合わせで税目が変わります。契約者と被保険者が同一で受取人が相続人の場合は相続税の対象になり、「500万円 × 法定相続人の数」までは非課税です。契約者と受取人が同一なら所得税、三者がすべて別なら贈与税になります。この計算機は税引き前の金額で計算しているので、相続税の課税が見込まれる場合は非課税枠を確認してください。
- 入力した金額はどこかに送信されますか?
- いいえ。計算はすべてブラウザ内の JavaScript で完結します。アップロードも保存もログ記録も行わず、保険会社や代理店に情報が渡ることもありません。この分野の計算機は結果の前に問い合わせフォームが挟まるものが大半ですが、ここには何もありません。
出典
このツールが使っている計算式と税率・基準値は、下記の資料に基づいています。制度は改正されます。ここの数字と出典が食い違う場合は、出典が正しいものとお考えください。
2026年9月1日 時点で、下記の出典と数値を突き合わせています。